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第八話  ナースはエジキ
 どういうわけか都内某所に入院中だ。 十代前半に経験して以来、40年ぶりの深刻な事態に僕はただゴロニャンとうろたえる。
 何しろ、こちとら身動きのとれない病人の身の上で、少年時代と同様に十人十色、 百花繚乱、個性に富んだナースのみなさんのお世話になっている。
 ま、それにしても予定外の入院生活なので、大いに原稿作業に支障をきたした。 だいたいこの原稿、紫煙なんぞをくゆらせ、ビールかウィスキーのグラスを傾けながら深夜秘かにリラックスして書くのがいつものコトで。
 明日には再び大学病院へ転院などというせわしい気分じゃ、なんとも困るのだ。 すなわち、病院生活と猫のハナシなど、およそ不釣合ではないかいな。
 さて、そうなるとここは、ナースの数人にアンケート調査でもしてみるか、ということにした。
「え? 猫? 飼ったコトないわネ」
「仕事が介護や看護、さらに家に帰ってぐ〜たらな猫の世話なんて、まっぴらでしょ?」
「そうねえ」
 これらはベテランで良く仕事のできるナースからの返事。また別のナース。
「わぁ大好き。実家に帰ると2匹いるんです。東京でも飼いたいんですけど、なかなかねえ・・・」
 必要以上に気を配ってアレコレ世話してくれる若いナースで、 そのヒトの良さのために案外仕事の流れが滞ったりしちゃう。僕の転院にさえ涙を流しそうになってくれた。 気立ての良すぎる“猫好き”は、やっぱりあの高慢チキな動物のエジキになっちゃうタイプなんだろうな。
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